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ベッドから起き上がる。 カーテンの隙間から外を見ると、まだ薄暗い。 眠気はさほど無いので、そのまま僕は洗面所へ。 洗面所の棚に置かれた時計を見ると、まだ五時ごろだ。 蛇口をひねり、水を出す。 流れ出す水を手ですくう。 冷たい。 まだ、感覚があるのか。 いつか、僕はこんな感覚もなくしてしまうのだろうか。 怖かった。 強がっても、やっぱり怖い。 今日の作戦、って一体なんなんだろう。 やっぱり、対人戦闘なのか? ……いや、考えるのはやめだ。 考えても意味が無い。 ただ僕の不安が増すだけ。 大丈夫。 大丈夫。 僕は自分に言い聞かせ、顔を洗い、すぐに洗面台を出た。 そのまま机に突っ伏し、少しだけ泣いた。
Mechanical Fairy ver,3.04 破
「目が赤いですよ。 大丈夫ですか?」 右隣に座るクーが僕に尋ねる。 周りは次の作戦会議のために慌しく動いている。 テーブルを出すために右奥の扉から男性が数名、大きなテーブルを担ぎ出している。 女性は左奥の扉から人数分の椅子を持ってきては出て行き、持っていては出て行った。 涼風さんは前のスクリーンの前で次の作戦行動の資料を見ながら思案中らしい。 僕は周りの状況を一瞥してから、クーに答える。 「うん、大丈夫。 ちょっと泣いただけだから」 僕は笑顔を作って、クーに言う。 周りは僕たち二人が居ないかのように作業に没頭している。 あちこちで「ほら早くする!」「ここの椅子は!?」といった声が聞こえた。 クーは隣にすとんと座り、そのまま、僕の膝の上に倒れこんだ。 「はい?」 僕は素っ頓狂な声を上げる。 周りは少しづつ僕の行動に気付き始めた。 クーは両手を頭の下に置き、そのまま目を閉じた。 眠るつもりだ。 そんなことは絶対に阻止する。 しなければ、周りの人たちが構え始めた岩塩を食らう事になる! 「起きろォッ!」 クーの頭をつかみそのまま右へ投げるようにクーを起き上がらせる。 うぅー、とうなりながら眼をこするクー。 嘘をつけ、と頭をこつん、とする僕。 ゆっくりと周りの塩がしまわれていく。 ふぅ、今日もまた同じような展開なのかなあ。 と、僕が長く呆れたようにため息を吐くと、 「ふふ、いつもの巧に戻りましたね」 口元に手を当て、柔らかく微笑むクーの姿が眼に入った。 周りから淡い後光が差し込んでいるように見えた。 ぽーっと見とれる僕。 僕の視線に気付いたクーは、笑顔のまま僕の顔をつかみ、頬に口づけをした。 「今はこれで我慢します。 終わったらこれ以上をお願いします」 満面の笑みを浮かべた。 そして、僕は塩の攻撃にさらされる事になった。 地味に痛いんだよね、コレ。 「さて、今回は工場を奪還します」 スクリーンの赤い点をスティックで指しながら涼風さんは言う。 「本社から出撃し、短銃とナイフで量産型を破壊します」 奪還したため緑色のマーカーになった本社からスティックを赤い点へと滑らせる。 スティックをいつみても華麗なスナップで短くする涼風さん。 工場は山に近いため、おそらく狙撃だろう、と僕は思っていた。 直後、涼風さんは演台を両手で思いっきり叩いて、叫ぶ。 「今回は、狙撃ではなく正面から堂々と打ち破ります!」 空気が凍った。 僕の思考能力は限界突破した。 これにはさすがのクーも茫然自失といったところだ。 すぐに抗議の声が上がる。 「そんなもの、死に行ってるも同然じゃないですかっ!」 会議室の中ほどから声があがり、即座に賛同の声が上がる。 涼風さんは前に手を出し、静止する。 「皆さん、静粛に。 今回の作戦は夜です。 奇襲、つまりは夜襲です」 「まずは、このマップをご覧下さい」 演台に備え付けられたスイッチをカチリ、と押すとスクリーンに投影された映像が変わった。 方位が左上の空欄に描かれ、真ん中には工場の俯瞰図が映し出された。 四角い俯瞰図の左下と左上、つまり南東と北東に赤いマーカー一個ずつ見える。 そして、四角い枠の中にある凹の字型のへっこみに黄色いマーカーが一個ある。 「狙うは、工場の奥にしまわれているこの、黄色いマーカーで示された量産型です」 涼風さんはスティックを伸ばし、黄色いマーカーを指す。 そのままスティックを滑らし、赤いマーカーを示す。 「これは無人の迎撃機能です。 ここから20mの銃弾が一秒に五発出ます」 速。 なにそれ。 「先日の狙撃に対応して、新たに作られたようです」 なるほど、絶好の位置にあるのに狙撃が出来ない理由はここか。 「そこで、まずはこの防衛システムを敷地外から無害化し、無防備となった上で破壊します」 草木も眠る丑三つ時。現在、深夜の二時半。 『外から防衛システムに干渉して迎撃機能を停止し、そこから侵入します』 灯りの少ない山の麓で待機中の僕に、通信で涼風さんの声が聞こえる。 『相手もバカじゃないから、停止してから復帰するまでは三分もないはず』 僕はゆっくりと、短銃の安全装置を外し、弾を込める。 実弾だ。 『とにかく、成功させることも大事だけど、それ以上に無事に遂行すること。 分かった?』 ―はい、分かってます― かちり、と弾をこめ、腰のホルダーに入れる。 ナイフを取り、クルクルと回して手に感覚をなじませる。 数分後。 『停止したわ。 行って!』 ―はい!― 僕は姿勢を低くし、音をなるべく立てないように工場の塀を登った。 中は案外広く、訓練場もかねているようだった。 東側から侵入すると、右と左に天文台を小さくしたような、ドームから筒が飛び出ている物体が眼に入った。 おそらく、あれが迎撃機能なのだろう。 停まっているとはいえ、怖いのでそろりそろりと歩いていると、 ズガガガガガ。 足元に複数の火花が散る。 ―なんで停まってないのォッ!?― 前へ飛び、銃弾を回避。 しかし、ドームがキリキリとこちらへだんだんと照準を合わせる。 暗い中、火花だけが明るく見える。 この音で恐らく誰かが気付いたのだろう、電気がつき始めた。 『自立システムもあったみたいね……迂闊だったわ。 アレは無視して、すぐに破壊を!』 僕は涼風さんの声と同時に、背中の推進器にブーストをかける。 低空のまま、前へと推進する。 後ろからは火花が僕を追っていた。 ガリガリガリガリ、と音を立てて鳴る地面。 だんだん電気がつき始め、P−VALKRIEの白い装甲が闇夜に浮かび上がった。 「敵襲ッ! 敵襲ーッ!!」 叫び声が聞こえ、ビーッ、ビーッ、と警告音が鳴り始める。 赤い警告灯がともり始め、装甲が光を反射する。 だが、もう遅い。 僕はもう既に量産型を捕らえている。 短銃をホルダーから取り出し、即座に構える。 前へ推進し迎撃機の銃弾をギリギリで回避しつつ、銃口を機体へ向ける。 ドンッ。 右腕にかすった。 もう一発! ガリガリ、と後ろからはどんどん銃弾が迫りつつある。 ドンッ。 左側の腰に当たった。オイルのような液体が弾痕から流れ出す。 前傾姿勢で前へ進んでいたが、どうやら迎撃機の弾が足を削っているようだ。 ガガガガガ、と鉄を削る音がする。 段々と銃弾が僕の脚、腰、胸へと向かうように弾道を上げてきていた。 僕は気付いていた。 迎撃機の銃弾と、僕と、量産型が一直線になっている事を。 そして、僕が避ければ。 そのまま、量産型は迎撃機の銃の雨を浴びるはず。 善は急げだ。 僕は推進器を右へ向け、左へ転進。 直後、ガガガガガガガ、と量産型が弾を受けた衝撃で痙攣しているように見えた。 いわゆる、蜂の巣だ。 そして、僕はそのまま推進器を右下へ向け、左上へ飛び上がる。 爆炎が闇夜を照らしていた。 爆音が静寂を切り裂いた。
残るは軍警察の基地のみ。 ここで、劣勢と判断した反乱軍は正規軍とFI社に和解を求めてきた。 どうやら、少しでも向こう側の主張を認めさせたいらしい。 巧とクーは別室で待機をする事になったが、そこで出会う人とは? 次回Mechanical Fairy 騙
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