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夢の中。なぜか認識できた。 俺は空を飛んでいる。むしろ「浮遊」。ふわふわと。 空には雲が多少あって、清々しい。人がまさに蟻の様に見えるぐらい高い。 すこぶる気分が良い。そのままふわふわと漂っていく。 前の方からリンゴがふわふわと飛んできた。なぜか2つ。 俺は不思議に思い、近づいていく。リンゴに手が届くぐらいの距離まで。 掴んでみる。なぜか柔らかい。むにむにしてる。 もうひとつも手にとってみる。同じように柔らかい。 そのままにぎにぎしてみる。リンゴが熱くなりはじめる。もしや、と思った時、眼が覚めた。 がばっと起き上がる。時計で確認すると、今は朝の5時39分。 すぐ横に、俺の手を自分の胸へと押し付ける玲。 今朝の夢はそのせいなのか、と考えていると、自分のやった行動で発火しそうになる。 昨日の火照りがまだ取れないのだろう、玲はすぐに俺の上へのっかる。 そのまま身体を倒し、俺の顔に密着。柔らかい感触が脳へ電流となって駆け巡る。 数分が経過。微動だにしない。息が、息が出来ないっ!俺は玲の顔を掴み、強制的に離脱。 「ぷはぁっ!はぁっ、はぁっ、はぁっ。」 身体に必要な酸素を供給開始。段々と脳が活性化してくる。 外はまだ暗い。日の出は6時半ほどなのだ。まだまだ暗闇。 そのため、豆電球はつけている。薄暗い部屋にうっすらと浮かぶ、玲の白い肌。 なぜか顔だけではなく、肩、腕、腰、足と、全てが闇に映えている。 状況が下した結論が頭に浮かび、俺は発火しそうになり、目線をそらしながら言う。 「と、とりあえず、服を着ろ、服を!」 俺は布団にもぐって外を見ないようにしていると、服を着る音がする。 数分経つと、その音が止む。そーっと布団にわずかな隙間を空け、垣間見る。 何故か黒の下着だけしかつけていない。しかもレースっぽい。勝負下着か? 俺は起き上がり、出来るだけ玲を見ないようにしながら言う。 「上着を着ろ、上着を!まだ朝は冷えるんだ、風邪引くぞ?」 直後、玲は小さなくしゃみを一回。 俺は頭を抱える。近づき、俺の額と玲の額に手を当ててみる。 すこし熱っぽい。37度といったところか。微熱っぽい。 玲はしぶしぶ上着を着る。一つ服を着るたびにかわいらしいくしゃみをする。 俺はため息を一回吐き、告げる。 「今日は休め。」 上着の袖に手を入れている玲はこちらを向く。またくしゃみを一回。 有無を言わさず、学校へ電話。『俺の欠席』も一緒に。仮病をうまく使う。 −どうしてキミが?− 訊いてくる。電話を切った後、俺はさも当然のように応える。 「そりゃ、看病しなきゃなんねーだろ?」 玲は眼を見開く。「ポンッ」と手を一回叩く。ガッテン、と幻聴が聞こえてきた。 そのまま俺の布団へもぐっていく玲。同じ布団へ俺も入り、2人で暖めあいながら夢へ。 朝の8時。雀と鳩が騒々しいぐらいに鳴いている。 俺は寝ている玲を起こさないように起き上がり、台所へ。卵粥を作る。 コトコトと音を立てる。淡い、良い香りが台所からリビングへ、広がる。 作り終わると、タイミングよく玲が起きてきた。洗面所へ顔を洗いに行く玲。 一人分の土鍋に卵粥を入れ、レンゲと空の茶碗を添えて玲の席へ。 俺は残った卵粥(といっても、玲の2倍以上あるが)を比較的大きな土鍋にいれ、レンゲでかきこむ。 タオルで顔を拭きながらリビングへ来る玲。タオルを椅子にかけて、いただきます、の動作。 土鍋から2杯すくって茶碗によそい、ふーふーしながら食べる玲。 すこし温めのお茶をコップに注ぎ、玲に出す。玲は両手でもってコク、コク、とゆっくり飲む。 先に食べ終えた俺は流しへ食器を持っていき、水につけておく。 9時。玲は布団で寝息を立てている。 俺は何もすることがないので、溜まった洗濯物を一気に片付ける事にした。 合計4回も洗濯機を回し、ベランダが洗濯物で埋め尽くされるほど洗い、干す。 一仕事やり終えたその達成感や爽快感が気持ちが良い。家事もさほど悪くないと思っているのはそれだ。 玲の居る部屋をのぞいてみる。玲は眼を開いてこっちを見ている。手で伝える。 −ねえ、風邪は汗かくといいんだよね?− 俺は右肩を回しながら、応える。 「まあ、そういわれてるよな。確かに確かに。」 左肩を回して返答を待つ。玲は期待の眼でこちらを見ながら、言う。 −じゃあ、『運動』しよ?− 考えてみる。うなってみる。脳がオーバーヒートを起こす。ぷしゅーと蒸気が頭から出る。 理解不能。「どんな」運動なのか、皆目見当がつかない。布団の横に座り、訊いてみる。 「なんの?」 玲はその言葉を訊くや否や、近くにおいてあった旅行鞄を漁る。 嫌な予感。玲の細い手は、旅行鞄から見慣れた箱を取り出す。 理解可能。確かに汗はかく。運動には代わり無いかもしれない。だが、 「俺の身がもたんって。」 手を顔の前で左右に振り、拒絶の意思を示す。 明らかにがっかりした顔の玲。その視線で良心が痛んだ。 その時、俺の脳に直感が出現。閃き。代案が浮かんだのだ。提案してみる。 「じゃあ、代わりとして俺が背中を流すから、風呂に入らないか?」 玲は頷く。布団からゆっくりと起き上がり、洗面所へ。 俺は後ろからついていき、袖と裾をまくりあげた。 タオルできっちりと身体を拭いて、布団へと戻っていく玲。 牛乳に少しの砂糖を入れて甘みをつけ、電子レンジで温める。 ホットミルクを玲に差し出すと、布団から上半身を起こし、やはり息を吹いて冷ましながら飲んでいる。 傍に座りながら、お茶を飲む。少し冷えた、麦茶。少し熱くなった身体には丁度良い冷え加減。 玲はホットミルクのコップを置き、布団へもぐりこむ。 そっと、玲の頭を撫でる。心なしか、玲の顔が安らぐ。表情にはあまり出てはいないが。 そのまま数秒と経たないうちに寝始める玲。 玲の寝顔を見ながら、俺が癒されていることに気付いた。少し顔が紅くなる。 たまにはこういう状況もいいかな、と思いながら、玲の寝息を、耳で、眼で、心で感じていた。
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