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台所に立つ俺と玲。作っているものはお弁当。 卵焼き、鳥のから揚げ、タコさんウインナーなどなど、定番メニューが並ぶ。 8枚切りのパンの耳を切り、即席でサンドイッチ用パンを作る。 そのパンに卵ペースト、ツナマヨネーズなどをはさんでいく。 2人で8こほど作って、ラップに包んで小さなバスケットの中へ。 パンの耳は細かく刻み、ビニール袋の中へ。後で使うため、お弁当の袋の中へ入れておく。 麦茶を水筒へ入れ、同じくお弁当の袋の中へ。 「さ、行こうか。」 こくりと頷く玲。携帯をポケットの中に入れ、いざ出陣。 小さなバスケットは玲に持たせ、少し大きなお弁当の袋は俺が持つ。 目指す場所は歩いて10数分の位置にある、比較的大きな公園。 10時半前。公園に到着。 大きな池のほとりにベンチがいくつかある、静かな公園。 池の広さは一周2kmほど。子供の頃、散々走らされた記憶がある。 レジャーシートをひき、その上に座る俺と玲。 玲は俺によりかかってくる。玲の頭が俺の肩にのっかる。ほのかに香水の香りがする。 俺はふと思い立ち、お弁当の袋をあける。 −まだ早くない?− 玲が不思議そうに俺の行動を見ながら、手で質問。 俺は袋の中からパンの耳の袋を取り出し、微笑む。 「まあ、見てなって。」 俺は立ち上がり、池に近づいていく。ギリギリのところで立ち止まり、しゃがむ。 玲は俺の後ろから覗き込んでいる。 袋の口をあけ、刻んだパンの耳を一掴みし、池に投げ入れる。 すると、池から勢い良く何かがパンの耳を食べ始める。 「ほら、あれが理由さ。」 指差す。赤や白、金色などの、綺麗な文様の錦鯉が、パンの耳を奪い合っていた。 1,20匹はいるだろうか。かなり数が多く、一匹一匹が大きい。 かなり迫力がある。玲はそれをみて、しばし言葉を無くす。 俺は気にせず、どんどんパンの欠片を投げる。投げられる餌につられ、鯉は暴れまくる。 全部投げ入れた。なんとなく気分がスカッとした。 鯉は池の奥深くへと戻っていく。俺は空っぽになった袋を持って玲のもとへ。 玲は別の方向を見ている。どうやら、近くに居る他のカップルを見ているようだ。 しきりに、自分とカップル、特に女性と見比べている。 「どうした?」 横に座り、玲に訊いてみる。玲は俺の顔を見て、自分の隆起を見て、手で訊きかえす。 −私の胸って、大きいのかなあ?− 石化。すかさず玲はポケットから金の針を取り出し、灰色で硬い俺を刺す。 輝きながら柔らかさが戻り、カラーに戻る俺。しかし、硬直は戻らない。 チラッと見てみる。お世辞にも大きいとは言いがたい。 もともと華奢なため、胸も小さい。とはいえ、面と向かって言うこともできない。 なぜなら、切ない眼で俺に訴えかけてくるからだ。上目遣いで。 俺が返答に困っていると、玲はおもむろに俺の手を握る。 そして、俺の手の平を自分の胸に強くあてがった。 「なっ!?」 思わず疑問の声を上げる。同時に、柔らかい感触が手に伝わる。 頭の上では悪魔が悦の表情に浸っていて、天使が頭を抱えている。 幸い、人通りは少なく、見ている人もいないが、手を離そうにも玲はそれ以上の力で押し付ける。 ただ押し付けるだけではなく、玲は胸の上で手を滑らす。ちょうど、愛撫のように。 無表情ながら、吐息は荒っぽく熱くなっていく。より手に力が入る。 俺は無理矢理手を引き剥がす。心の片隅で残念がっているのが凄く情けない。 「お、大きくしたいのか?」 しどろもどろになりながら答える。俺の方が発火しそうだ。脳味噌はオーバーヒート寸前だが。 玲は自分の胸に手をあて、感触を確かめる。少し自分の胸を触った後、小さく頷く。 「帰ってから、じゃダメか?」 玲は首を横に振る。ちょっと待て。どういうことだ? 疑問をぶつけようと、口を開こうとした。ふさがれた。同じ口で。 勢いが強すぎて、後ろへ倒れる。俺が下、玲が上に乗っかる形。 無言の抵抗を試みる。が、玲は俺を見たまま、離れない。舌が侵入してくる。 周りを見てみると、段々と視線が集まってきているのに気付く。 近くに居たカップルや、ジョギング中の中年男性、犬を散歩中の初老の女性。段々と増えていく視線。 顔を手で引き剥がす。糸を引く、俺と玲の口。ぷはっ、と息をする玲。 「頼む、周りの眼を気にしてくれよ。」 俺は嘆くように言う。玲は意に介さず、手で言う。 −関係ないよ。愛撫がダメなら、キスをしてもいいでしょ?− やっぱり玲だ。うわー、ちょーゴーマーン。 落胆。俺の周りが少し暗くなる。青い炎が俺の周りをゆらゆらと飛ぶ。 なんとなく時計を見てみる。11時55分頃だ。そろそろ昼時。 「なあ、まずは昼ごはん、食べないか?」 火照った顔を玲に向け、提案する。 玲はしぶしぶ了承。お弁当の袋と、竹製のバスケットを開ける。 午後は、午前よりも酷くなる確信があった。なかば諦めながら、俺はサンドイッチを食べ始める。
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