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その日の夕方。学校帰り。制服、鞄を持ったまま、近所のスーパーへ。 年を取った女性達がこぞって買い物をしている。結構人は多い。 「おぉれは、な、み〜だをながさないぃ〜ダダッダー♪」 歌を歌いながら買い物。シイタケを手にとって値段を確認。 高い。そっと戻す。そのまま野菜売り場をうろうろ。 「ロボットだからぁ〜ま、しぃんだ、からぁ〜ダダッダー♪」 お得品のジャガイモとニンジン、ホウレン草をカゴへ。 次は精肉売り場へ。色々と物色。既に売り切れている肉もあったが。 手羽元を手に取り、買おうか買わないか迷っていると、肩をトントン。 振り返る。怪訝そうな顔で、制服の玲が居た。 −何歌ってるの?− 質問。現実に引き戻され、急に恥かしくなる。 「い、いや、その。気にすんなっ!」 顔を肉へ戻す。顔が熱い。周りからの視線が気になり始める。 目の前の肉を選別するのに集中する。安くて、多いもの。 今日は豚肉が安いらしい。スライスした豚肉のパックを手に取り、カゴへ。 お一人様2パックまでらしいので、丁度来た玲の分も合わせて合計4パック入れる。 「あとは、油とパンと、ジャムあたりか。」 歩き出そうとすると、腕を掴まれる。 玲が腕を組む。なっ、と声を出しそうになるが我慢。気にしないふり。 周りの視線が心なしか注がれている気がする。 −行こう?− 玲の手が動く。意味を理解し、頷く。二人して歩き始める。 レジで会計を済ます。今日の買い物は片手で充分持てる量だ。 玲は俺の横で、手を力を込めて握っている。暖かい。 そのまま、一緒に家へ。玄関で、今まで言わなかった疑問をぶつける。 「今日も、ウチに泊まるのか?」 玲は靴を脱ぎながら頷く。俺は大きくため息。 一人分作るのも、二人分作るのもさほど変わらないのだが。問題がある。 「で、着替えは?」 玲はそこで自分の失態に気付く。急いで外へ出る。 俺は肩を落としながら、夕飯の準備へ。どうせ戻ってくるだろうから、二人分作る。 今日はホワイトシチューにしようか。袖をまくりながら考える。 ドアの開く音。玲が戻ってきたようだ。 息を切らし、大きな旅行鞄を背負った玲がたっている。 俺は鍋から眼を離さず、声をかける。 「お疲れ。とりあえず座ってな。もうそろそろ出来るから。」 玲は旅行鞄を置き、椅子へ腰掛ける。息が段々と整ってきたようだ。 俺は皿へシチューを注ぐ。大きめに切った野菜がゴロゴロと出てくる。 二つの皿を持ち、テーブルへ。一つは玲の前、もう一つは俺の席へ。 「そうだ、ご飯頼むわ。」 玲に言う。玲は頷き、立ち上がる。俺はスプーンとお茶を取りに台所へ。 しゃもじを持ち、丁寧に茶碗へご飯を盛る玲。なんとも家庭的だ。 「いただきます。」 −いただきます。− 二人で食べ始める。少しづつスプーンですくい、口へ運ぶ玲。俺はお茶を飲んで言う。 「で、今日は何する?」 玲はもくもくと口を動かしながら手話。心なしか顔が紅い。 −キミが欲しい。− 頭に疑問符を浮かべる俺。少し思案してみる。ぽく、ぽく、ぽく、ぽく、ちーん。 一つ、思い当たるものが。まさか、とは思いつつ口に出してみる。 「まさか、その、いかがわしい行為を?」 玲は大きく頷く。スプーンで再びシチューをつつく。 俺はスプーンを置き、頭を抱える。ひとまず、お茶を飲む。 −今日の深いヤツで気が昂ぶったの。− 気管に入り、むせる。もう少しで吹きそうになった。危ない危ない。 多少の咳払い。喉の調子を整え、言う。 「と、とりあえず、風呂、入ってからな?」 玲は頷く。満足したのか、また食事に集中しだす。 ジャガイモを口へ。ほくほくと口を動かす玲。 今日の夜は、昼以上に地獄になりそうな予感がした。
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