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体育の時間。体操着に着替え、校庭へ。 既にバレーの準備はされていた。クラスマッチを控え、練習にも熱が入る。 トス、レシーブ、スパイク。順々に練習をこなす。 手で三角を作り、額の上で受け止める。そのまま反動で上へトス。 1,2,3と歩を進め、両足ついた瞬間に上へ跳躍。伸ばした手は軽くネットを越える。 タイミングを合わせ、斜め下へ向かって思いっきり腕を振り下ろす。 ズドッ、と音を立てて地面に激突するボール。久々に身体を動かすが、なまってはいない。 20分ほど練習した後、他の班との練習試合。 「おねがいしやーすっ」 両班、礼。コート内にすぐ入る。基本的に前後の右と真ん中、左の計6人。俺は真ん中後ろのポジション。 相手のサーブ。緩やかな山を描く、速いサーブは多少右に曲がりながらネットをかする。 すかさず下へ入り込み、レシーブ。上へ高くはね上げる。セッターの男子が左へトスを上げ、そのままスパイクへ。 力強く打ち込まれたボールをレシーブするが、当たり所が悪くはるか後方へ飛んでいった。 そのまま、点を取っては取り返す、といった拮抗した状態で20分が経過。 14−13のまま、応酬が続く。かれこれこのままで5分。スパイクを打っても巧く返され、相手も3段攻撃。 何故か段々と皆ハイテンションになり、スパイクを打つ時は決まって真上にある太陽をバックに、 「日輪の力を借りてェッ!今必殺のォッ!!」 と言い始める始末。それはかなり違うんじゃないのか?と心の中でつっこみ。 レシーブをするために飛び込む。腕や足が地面にこすれる。多少痛いが気にしないことにする。 他の班は既に終わっていて、俺らのコートの周りへ全員集結。 「どっちも頑張れーっ」の大合唱。こちらはあと1点とれば同点なのだが。 無常にも終了のチャイム。激しい打ち合いのため、両班とも汗が止まらない。 タオルで汗を拭き、ネットを片付けてすぐに校舎内へ。 「あーっ!あとちょっとで勝てたのになぁっ!!」 廊下を歩きながら思いっきり大声で嘆く。悔しいことは悔しいが、後腐れ感はない。 俺の横にぴったりとくっつく玲。手にはタオルとアクエリアス。 アクエリアスを黙って差し出す玲。貰って蓋をきゅっと開け、胃へ流し込む。 冷たい、爽やかな味が口に広がる。半分ほどを一気に飲み、ぷはぁっ、と息を吐く。 蓋を閉め、玲の方を見る。半そでハーフパンツ姿の玲は、スポーツ少女に見えなくもない。 玲は俺のひじや膝を見ている。次いで見る。血が滲んでいた。 「あー。これか。」 問いかける。玲は深く一回頷く。ポケットの中から絆創膏を取り出す玲。 「お、ありがとな。」 受け取り、近くの水道で泥を洗い流す。流水の冷たさが少ししみる。 眉を寄せ、思わず「つっ」と口走ってしまう。 声にならない悲鳴を上げそうになりながら玲が即座に近づいてくる。 物凄い手の動き。眼が追いつかない。速すぎる。明らか動揺している。 「お、落ち着け。ちょっとしみただけだって。」 俺のほうが慌てる。水道を止め、傷口をタオルで拭いて、絆創膏をはる。 はった絆創膏の上から1,2回ポンポンと叩いて問題ないのをアピール。 「ほら、大丈夫だから。な?」 無表情ながら眼に涙をためている玲の頭を右手で撫でる。 玲は頭を撫でられながら俺の左手を握る。そのまま、教室へ歩いていく。 玲は教室の中へ。中では女子が着替えている。俺ら男子は廊下。 服を脱ぎ始めると着替え終わった女子が教室内からのぞいている。 ある男子が体操着を脱ぐ。教室内から何故か黄色い声が聞こえる。 ある男子がシャツを着る。教室内から何故か落胆の声が聞こえる。 男子がしたら犯罪なのに女子はOKなのか?と疑問を抱く。 着替え終わり、体操着をたたんでロッカーの上におく。 先ほど動きすぎたのか、少し眠気に襲われ、廊下にあぐらで座り、眼を閉じる。 廊下の窓から暖かい陽が差し込んでいて、気持ちいい。そのまま寝込んでしまった。 周りが騒々しい。意識が戻ってくる。ゆっくり、段々とはっきりしてくる。 眼をゆっくりと開けてみる。前には眼を閉じた玲の顔。唇に柔らかい感触が伝わっている。 右を見る。数人の女子が「うわあーっ」と言いながらキャーキャー騒いでいる。 左を見る。数人の女子が「くそおーっ」と言いながら拳を握り締めている。 顔が紅潮しだす。自然発火しそうな勢いである。 俺は後退しようとする。唇は離れるが、凄い勢いで壁へ激突。 「ぐおおぉぉ…」とうめきながら後頭部を抱える。自分で言うのもなんだが、かなりアホだ。 玲は俺の行動に不意を突かれたのか、「理解不能」な眼で見てくる。 「ここは廊下だぞ?分かってるのか…?」 少し膨らんだ頭を左手でさすりつつ、右手で「びしっ」と玲を指差す。 玲は無表情のまま、手を動かし始める。 −分かってるよ。無防備なキミが悪い。− 動かし終わると、俺のマネをして右手で「びしっ」と俺を指差す。 確かに、無防備にも寝ていた俺も悪い。だがな、 「だからっていきなり行動起こすのはどうかと思うぞ!?」 もう必死だ。何をしたいのか、だんだんとわからなくなってきた。 相変わらず、手を動かす玲。周りは玲の意図を読んだのか、黙って見守っている。 −寝顔がかわいかったからね。思わず。− 上から10tの分銅が落ちてきた。二度目。ずどーんっ、と音を立てて俺の頭へ落下。 首の力を抜いて頭を垂れていると、頭に上への力が急にかかる。 玲の顔がすぐ近くになっていた。そして、唇が再び触れあう。 舌が俺の口を開けようとする。んーっ、と喉をならして拒絶の意思を示す。 そんなこと玲はおかまいなし。周りのこともおかまいなし。物凄い力で舌が口をこじ開け、口腔へ進入。 一瞬、幸せな気分に浸った俺が憎い。すぐに我に帰るが、すでに密着状態。 二つの隆起が俺の身体に当たり、一つの隆起が玲の身体に当たっている。そのままの状態で10数分。 先生は俺らを見てみぬ振りをし、男子は必死で目をそらし、女子は好奇心のままに凝視。 開放された時にはもう周りには20人以上が円を囲んでいた。もう弁解は出来ない。 放課後、男子諸君に質問の矢と言葉の槍に貫かれたのは言うまでもない。
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