ピコーン。ドカッ。シャッ。ドガンッ。ガンッ。 休日。電子音が流れる室内。俺とクーは格闘ゲームで対決中。 背景は寺。日本風の格闘ゲームだそうだ。たまに引っ張り出して遊ぶ。 俺はリーチと攻撃力は良いが、防御力が低い刀持ちのキャラ。 クーはオールラウンダーな、拳闘士。 「いまだっ!突きぃっ!!」 ドシュッ、と刺さる音がテレビから流れ、体力ゲージが減っていく。 むぅー、と呟いたクー。すかさずコマンドを入力し、正拳突きを放つ。 スキをつかれ、モロに直撃。後ろへ吹っ飛ぶ俺のキャラ。 「あーっ!?」 思わず叫んでしまう。ただでさえ少ない体力が更に減る。コントローラーが振動。 すぐに受身。立ち上がり、にらみ合う。両者とも、あと一撃で沈む体力だった。 先に動いたのはクー。こちらにステップで歩み寄り、止めとばかりに正拳突き。 俺は後ろへステップして避ける。そして、 「とどめだっ!」 キュピン、と電子音。カットインが入る。突きの連打。 ドドドドドドド、と刀では到底聞こえない音が聞こえ、最後の一撃は斬りあげ。 『千・光・刃!』 と、画面からボイス。倒れたクーのキャラから魂が天にのぼり、2P Win!の文字が画面に躍る。 俺は思わずガッツポーズ。クーはむー、と再びうなり、身体を震わす。 驚いてクーを見る俺。クーは無表情のまま、口を開いた。 「凄く巧くて、感動してしまった。身体が震えた。」 感動で身体を震わすとは、なんともステレオタイプな反応だ。 ははは、と笑って、台所へ紅茶を取りに行った。 翌日。学校。昼休みの教室。皆は弁当を食べたり、喋ったりしている。 ただ、ほぼ全ての人間がこちらをチラチラと見ている。好奇心の眼。 「昨日の突きは凄かったな。」 クーは俺に話しかけてきた。何故か周りの眼がギラリと光る。 頭に疑問符を浮かべつつ、俺はリプトンのレモンティーを飲みながら答える。 「結構出すのに苦労してさ、疲れたんだよなー。」 周りの眼に黒さがまとわりつく。気にしだす俺。クーは後ろの席に座り、回想。 「特に最後の突きが凄かったな。どうすることも出来ず逝ってしまったよ。震えが止まらなかった。」 何故か唸りだす周り。俺は何がなんだかよく分からないが、とりあえず無視。 俺はうんうん、と頷きながら返答。 「あぁ、終わりに近かったからな。思いっきり放ったさ。」 がるるるる、と獣の唸り声に変わっていた。なんでだ? クーは俺の手を取り、眼を輝かせながら言った。 「今日もやろう。今度は私が逝かせてやる。」 うおおおぉぉおぉ、と叫びだす男子達。女子は顔が真っ赤だ。 俺は余裕の笑みを顔に出しながら、クーに言う。 「やるか。今度も俺が逝かせてやるぜ。」 遂に彼らの堪忍袋の緒が切れたようだ。男子は俺を、女子はクーを引き離して囲む。 男子たちの眼はまさに猛禽類の眼であった。俺は何をされるのか分からず、怖かった。 「お前、なんて卑猥なことをオオオォォォ!」 ぽかん、と口を開ける俺。男子達はうおおおおぉぉぉ、と同調しだす。 意味を理解できない俺は、取り敢えず質問をしてみる。 「俺が何したよ?」 質問の仕方が悪かったようで、暴走は更に加速。 既に人の言葉を発せない者たちが数名。かろうじて理性を保っているものが言う。 「真っ昼間から『突く』とか『出す』とか『放つ』とか『逝く』とかアアアァァァ!!」 最後はもはや言葉になっていない。が、そこで気づく。彼らは壮絶な勘違いをしている事に。 俺はため息を一回。俺の一挙動にも一々反応する男子達がちょっと鬱陶しい。 「あのな、それ、格ゲーの話。」 今度は彼らがぽかん、とした。顎が外れているものも居た。 俺は一から十まで説明した。やっと彼らは納得し、人に戻っていった。 クーの方も同じのようで、先ほどまで奇声を上げていた女子達に落ち着きが戻っていった。 やっと開放される俺とクー。はあー、と深いため息をつく俺とクー。 「いつも私達が性欲の虜だと思われてるとは、心外だな。」 と、少し非難めいた口調でクーは言う。少しビクッとする彼ら。 俺は大きく何回も頷いて、同意の意思を示す。 「そうだな。俺らだって普通に遊ぶさ。」 肩をすくめる彼ら。俺は笑って、まあいいけどな、と付け足した。 しかし、クーは俺の腕をつかみ、身体を密着。そして、告げる。 「そうだな、最近は無沙汰だし、本当にするか?」 直後、既に用意されていた菓子パンの砲撃に晒されたのは、言うまでもない。
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