あるところに、王国がありました。 その国の王様は、贅沢三昧で重税に重税を重ねていました。 民衆達は王様の横暴ぶりに、失意と怒りを感じていました。 そこで王様は、『黒い髪の者』に対して、差別的な法令を出しました。 民衆はこぞって黒髪の人たちに鬱憤を晴らしていきました。 その国の王都に、1人の男の子と、1人の女の子が居ました。 2人とも、黒い髪の持ち主でした。違ったのは、2人の身分でした。 女の子は王族でしたが、黒い髪を持って生まれたために、王族であることを隠していました。 王宮から城下町に出て行っても、誰からもとがめられないし、誰からも気を留めてもらえませんでした。 男の子は平民でした。彼は黒い髪を持って生まれたために、全ての人間から迫害されました。 男の子は都の外の野原でぼーっと空を見ているのが好きでした。 その野原で、2人は出会いました。 こんにちは、と女の子。 こんにちは、と男の子。 2人は、すぐに仲良くなりました。毎日、野原で遊びました。 次第に、2人は幼心に惹かれあっていきました。 そんなある日、女の子はぱったりと野原に来なくなりました。 実は、王宮に仕えている人がその光景を見て、王宮に女の子を閉じ込めたからです。 隠しているとはいえ、仮にも王族の身分の者が平民と親しくしているなど、とその人は言いました。 男の子はその日から毎日、毎日通いました。ですが、女の子は来ませんでした。 それから十数年。 女の子は黒髪の綺麗な女性に成長しました。 たくさんの男の人が、悪法によって差別される側にも関わらず彼女に求婚しました。 ですが、彼女は頷きませんでした。それどころか、誰にも会おうとしませんでした。 彼女はずっと、部屋にある小さな窓の外、正確には、城下町を見ていました。 男の子は黒髪の精悍な男性に成長しました。 いくどとなく差別を受けてきましたが、それに負けず働いていたため、皆も段々と認めていきました。 気付けば、彼は誰からも尊敬を受ける人になっていました。誰も彼を差別しませんでした。 ある日、地方の村で反乱が起きました。 数十人の農民が、役所や商人のところに押し寄せ、借用書などを焼き払いました。 国は、兵千人を使って、その反乱を鎮めました。 その噂はたちまち王国全土へ伝わりました。当然、王都に居る彼のもとにも。 そして、あちこちから反乱の狼煙が上がりました。 王国の兵は反乱軍に数で押され、敗北に敗北を重ねていきました。 ついに、王都内で反乱がおきました。その反乱軍の隊長が、黒髪の彼でした。 彼は独自の用兵術を用い、沢山の兵が居る王都であるにも関わらず、あっと言う間に王宮を取り囲みました。 王宮を取り囲んだ彼は、部下から発見した王族や大臣達の報告を受けていました。 王族や大臣は、民衆の前で処刑した方がいいだろう、と考えていたから、殺さないで報告させたのです。 そのなかで、気になる報告がひとつありました。 「王宮の端の、小さな部屋に黒髪で、とても綺麗な女性が居た」というものでした。 彼はその女性以外の拿捕を指示しました。そして、その女性の部屋へ、一人で向かいました。 もしかして、と彼は思っていたからです。その期待に動かされ、部屋へと向かいました。 彼はドアを開けました。彼女は、窓の外を見たままです。 こんにちは、と彼は言いました。彼女は彼を見て、こんにちは、と言いました。表情は何もありませんでした。 彼はその時、昔あったことがある、あの女の子だ、と気付きました。 再び窓を見て、あなたが軍の隊長なんですね、と彼女は言いました。彼は黙って聞いていました。 私はあなたをずっと待っていました、と彼女は言いました。彼は一歩ずつ、彼女に近づいていきました。 隠していましたが、私は王族のものです、と彼女は言いました。彼の歩みが止まりました。腰の刀に手が伸びました。 ですが、あなたに殺されるなら、私はかまいません。むしろ幸せです、と彼女は言いました。 手が止まりました。彼の頬には、涙が伝っていました。彼は涙をぬぐいました。 彼は彼女の後ろへ行きました。彼女は、彼のほうを向こうとしません。 そして、彼は彼女の肩を叩きました。その時、彼は気付きました。 彼女の頬にも、涙がつたっていました。彼女は、窓の外を見たまま、言いました。 昔の、あの頃が一番良かったですね、と。 彼は言いました。僕は、君をどうすればいいのだろう、と。 あなたの思うとおりにすればいいと思います。私はどうなろうと構いません。と彼女は言いました。 彼は彼女の肩を掴み、叫びました。それでいいのか、辛くないのか、と。 私は貴方が好きです。好きな殿方になら、どうされても構いません。と彼女は言いました。 ある方法を思いついた彼は、彼女を外へと連れ出しました。 その後、王国は無くなり、民主的な国に生まれ変わりました。 国家設立宣言の際に、彼は壇上へ上がり、こう述べました。 この革命は、確かにほぼ全ての人にとって、嬉しいことだろう。 だが、この革命の時、一人の平民と、一人の王族の涙が流れたことを、忘れないで欲しい。と。 それから一番の功績者と謳われた黒髪の彼は、歴史の表舞台から姿を消しました。 一説によると、森の中にある、処刑された王族の墓の近くに、彼と良く似た黒髪の男性が住んでいたそうです。 そして、彼の伴侶は、同じ黒い髪の、とても美しい女性だった、といわれています。
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