センサーを見る。2000以上の反応。すでにセンサーが追いついていない。 「そんな、2000以上の…」 ブリッジに居る誰もが驚きの声をあげ、絶望に駆られた。 副艦長は嘆息し、皆に告げる。 「皆、頼む。他の者を生かすために、この艦と、命を共にしてくれないか?」 騒いでいた皆は一斉に沈黙。 俺はヘルメットを取り、ブリッジから出ようとする。 艦長が俺を呼び止めた。 「キミは、今から何をしようと…?」 振り返り、艦長―クーに対して告げる。 「何って、出撃さ。」 ブリッジがどよめく。誰もが、俺の発言を不可解に思った。 副艦長が、俺へと近づいてくる。彼は俺の肩をポン、と叩いた。 「キミは、皆が慕う艦長の恋人だ。生きて、戻って来い。」 俺は紅くなった顔を隠すように後ろを向き、歩き出す。 近づいてくる、2000以上の正体不明の敵。だが、俺は戦う。 皆のために。何より、艦長のために。 歩いていく俺に、後ろからクーが声をかける。 いつもの無表情。だが、眼には不安が宿っていた。 「キミは、必ず、戻ってくるよな?」 俺は振り返り、微笑む。彼女は俺を見据えた。 「もちろんだ。お前を置いて死んだら、後で皆に殺されるからな。」 俺の笑みに、彼女は更なる不安を覚えたようだ。 「それ、死亡フラグ。」 淡々と告げる彼女に、俺はふきだす。 「ちょ、ちょっと!せっかくカッコよ」 途端、口をふさがれる。柔らかい感触。時が止まる。 数秒した後、離れる。彼女は後ろを向きながら、言う。 「必ず、帰って来い。帰ってきたら、言わなきゃならないことがあるから。」 俺は頷き、走り出す。 『装備は何にする!?』 整備士が叫ぶ。俺はコクピットに乗り込みながら言う。 「『保守砲』を頼む!」 保守砲。主に殲滅用に使う、巨大な砲身を持つエネルギー砲。 そのエネルギーは、搭乗者の精神力を使うため、かなり危険を伴う。 だが、威力は絶大で、一度に数十の敵を消し飛ばすことが出来る。 『…分かった。健闘を祈る!』 整備士は手早い動きで保守砲を俺の機体にセット。 ズン、と重さが伝わる。コクピットとはいえ、両手足の神経にコードがつながれている。 自らの両手足を動かすと、それに連動して機体の両手足が動くという仕組みだ。 俺は出撃準備を整え、管制官に向かって叫ぶ。 「では、『――――――』、MA−35、出撃するッ!!」 外へ飛び出た後、艦の上に陣取る。保守砲を構えていると、通信が入る。 『聞こえるか、『――――――』。』 クーの声。俺は照準を合わせながら、答える。 「聞こえてるぞ。なに用?」 彼女は一回コホン、と咳払い。その後、告げる。 『気が変わった。今言うぞ。生きて帰ったら、結婚してくれ。』 思わず照準がズレる。まさか、この時に言ってくれるとは。 通信から「わああああぁぁぁぁ!」と歓声が上がる。士気上昇を狙ったのだろうか。 クーの通信に割り込んだ通信から、激励やお祝い、そのほか様々な言葉をもらう。 再び照準を正体不明の敵に向けながら、俺は叫ぶ。 「もちろんだっ!」 丁度照準を向け終わる。 歓声と、俺が叫ぶのは同時だった。 「保守砲、発射!」 かなりの衝撃が俺を貫く。ビリビリと、俺の身体が悲鳴を上げる。 一発撃ち終わると、敵のうち、約10%が消滅していた。 かなりの高威力。直前のクーとのやりとりが、俺の精神力を向上させているらしい。 俺は手を震わせながら、もう一度構えなおす。 「もう一発、ぶちかましてやるぜっ!!」 数日後。本国の首都の中の閑静な住宅街。 「おはよう、『――――――』。」 寝床から眠い眼をこすると、クーが俺を起こしに来ていた。 生地の薄いネグリジェしか着てないため、下着が丸見え。 どうしても慣れず、必ず赤面してしまう俺。誰も居ないのに。 俺らは、勝ったのだ。後に『乱立軍』と呼ばれた、正体不明の敵たちに。 そして、勝利の報告と同時に俺とクーは退役した。 この功績により、司令官や大臣も目ではない、とされたクーも辞めたのは驚きだった。 今は一国民として平和な一日を送っている。 平和、がこれほど大切で、楽しくて、幸せなことだとは軍役中は思わなかった。 すでに朝食が出来ているらしく、良い香りが漂ってくる。 と考えていると、上にのしかかってくるクー。 「ちょ、ちょっとぉっ!?」 腰を俺の股間の上に乗せ、スリスリと動く。朝で元気になっている俺の分身にはこたえる。 クーは、動きながら、ほのかに顔を赤らめ、言った。 「さあ、恒例の朝の運動をしよう。」 平和は確かに幸せだ。だが、平和すぎるのもどうかと思った、朝だった。
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